2020/04/03

■今僕はとてつもなく心が震えています。フェラーリ 250GTOという名車をプラモで触ってしまったんです。しかもMade in Italyのキット……イタリア人が作るフェラーリのプラモデルです。
▲この赤い成型色。イタリア人がこの色だというなら、僕は彼らの声に耳を傾けたいと思います。旅をすると「郷に入っては郷に従え」なんて言葉が毎度頭をよぎります。プラモにもそんな感覚を僕は味わうことがあるのです
■僕は古着やさんが大好きです。プラモデルにも古着屋のように中古ショップがあります。中古ショップに行く時は、ふらっと行っていろんな模型のシャワーを浴びて帰ることが多いです。これが欲しいから探すぞ!ってのは僕はすごく苦手で、いろんな買い物でもお店に行って「うわ~」ってなったものをついつい選んでしまいます。そんな感じで手に取ったのが「イタレリ 1/24 フェラーリ 250GTO」。銀の箱にレッド……。このセンス。プラモという商品は箱も主役。部屋にそっと置いておいても心がざわつかず、さらにクール。本当にこういう仕事ができる人になりたいと思うんです。このデザインが刺さらなかったら買わなかったと思います。箱の上部にパンチ食らったみたいな痕跡がありますが気にしません。
■箱を開けてこれが目に飛び込んできたらどう思いますか?僕は「勝ったな」って思います。このパーツを見た・触った瞬間に体内に250GTOの魅力が流れてきます。フェラーリを象徴する「赤」とエンジニアリング・チームが追い求めたエアロダイナミクス…つまりボディデザインをこのパーツだけで手に取って、じっくり見ることができるんです。もしこれが「グレー」や「白」だったら。僕は最後まで組めたでしょうか。
■このキット、シート周りのインテリアや、ボディのパーツは非常にシンプルなのですが、エンジンはちょっとこだわられてます。250GTOの2953cc V型12気筒エンジン「テスタロッサエンジン」を楽しんでくれよ!というイタリアンサービス。メッキパーツ、シルバーと黒による成型色で分けられており、気分は最高。
▲ですのでこちら開けた状態でも作ることができます。可動式なので、ボンネット上のメッキの留め具を接着せずさすだけにしておけば、どちらの状態も楽しめます
▲日本のプラモとは基本のフォーマットは一緒でも、図の雰囲気や使われている記号がすこし違うだけで説明書のイメージはがらりと変わります。白の面積が多くてゆったりたっぷりのんびり~ですね。このキットは洋書の雑誌を読んだ気分にもなります▲黒いものは黒くしておこうというのは本当に車模型でありがたいと思っています。古いキットでも金型にプラを流すという行為は変わりません。このキットを生み出した人が「色があるほうがみんなうれしいかな?」という考えを受け取ることができます。「成型色による完全再現」なのか「チェイサーのように和らぎをくれる成型色」なのか。プラモは成型、成型色でいろいろな見方ができて本当に楽しいです

▲メッキはどっぷりとついたような輝き(??)。イタリア人のボタンあきまくりシャツスタイルのような色気むんむんです。色気ありすぎるのでパーツの穴にはまらなかったりして、なんかひと癖あるのもイタリアな感じ。シャツのボタンを開けるのは嫌いですが、アルマーニさんのようなピッチリニットスタイルから出る色気は好きです。つまりイタリアが大好きです(カテナチオ)
▲メッキパーツが赤に映える。赤の色気がシルバーアクセサリーでより増すかのように、このメッキパーツがあるからこそ、組んだだけでもこれだけ雰囲気が出るのでしょう。当時のイタリアのキッズに「フェラーリのプラモを机の上に置いておきたい! セクシーな車は俺たちのようなイタリア男子のたしなみだぜ(勝手な想像です)」というニーズに応えなきゃいけないと頑張った結果なのでしょうか?▲地中海の空や日光にはかないませんが、フェラーリレッドは日の光を浴びるとなんと美しいのでしょうか。当時このプラモを作って、イタリアの外光を浴びさせて遊んだ子供たちはどんなに幸せだったでしょうか? 自分の子供にもフェラーリってかっこいいんだぜって言っているのかな?
■セリアAが好きで、深夜のセリエAダイジェストで当時フィオレンティーナに所属していた僕のアイドル「ルイ・コスタ(ポルトガル代表)」のプレーにくぎ付けになっていた学生時代。カルチョからイタリアを知り、その後洋服や革靴、芸術、料理と常に僕の中に楽しさを提供してくれてきたイタリア。そしてやっと36歳になって工業製品までたどり着くことができました。実はフェラーリは好きじゃなかったんです。それは日本のメディアのお金持ち紹介や町で見たときの成金感がすごすぎて…。本当にかっこよく乗っている人もいるのにそういう人たちが「大衆メディア(専門誌などではございません。)」では取り上げられない。そういうことじゃ文化に触れるなんてのは一生無理。この1/24という小さなものを1つ作ることのほうが文化に触れます。文化に触れることも旅ですよね。だからプラモデルで旅ができると僕は思っています。小さな中古ショップで出会ったプラモデルがとても大きな幸せな時間をくれました。おしまい。
■Postscript
■幸運なことに僕は英国のグッドウッドリバイバル2017で250GTO/64と対面していました。この隣にはかっこいいツィードジャケットにどでかい白のワークジャケットを羽織っていたカッコイイオヤジさんがいろいろ指示を出していたのを覚えています。これは最高峰の大人のたしなみなのでしょうが、本気で楽しんでいる空気は車をより輝かせていました。まだまだ車を当時知らなかった自分。もう一度来いよという声が聞こえるので、世界が落ち着いたら真っ先に行こうと思います。その時にまた出会えたらいいな、だってお前あの日レースでクラッシュしてたもんね。おしまい。