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「初めて作るヒコーキ模型」は製作スタイルの全て/ハセガワ 二式水上戦闘機

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 「ハセガワ 1/48スケール 二式水上戦闘機」が完成した。零戦をベースに水上機へと改造したその姿は、美しい零戦に力強さが加わってとてもかっこいい。このキットのことは、僕が副編集長をやっているnippperのこちらの記事を読んで欲しい。
かっこよすぎる「水の零戦」のプラモを作ろうぜ!!/ハセガワ 1/48 中島 A6M2-N 二式水上戦闘機 佐世保航空隊

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 僕は先日スケールアヴィエーション編集部と共に「初めて作るヒコーキ模型」を編集した。この本は「飛行機のプラモデルってどんなものなんだろう?」「どんな場所に売ってるんだろう?」「どんな道具が必要なの……」などなどを専門用語を極力使うことなく紹介している。
 みんなで楽しめる世界一やさしい模型本「初めて作るヒコーキ模型」。
 この本に書いてあることは、僕の飛行機模型製作スタイルの全てで、正直これ以上でもこれ以下のこともしていない。いつもこの本に掲載されていることをやって完成させている。いつも同じようなことをしているのだが出来上がる模型は、それぞれ表情が異なって見える。そんな不思議なことが起こるからプラモデルはとっても楽しいんだ。
 今回作ったハセガワの二式水上戦闘機も乱暴に言ってしまえば、平筆で塗料を塗りたくっただけだ。コクピットなんて組み立てた後から筆を突っ込んでグルングルン回した。加藤単駆郎氏により描かれたパッケージイラストの雰囲気がとても素敵で、あんなふうに塗ってみたいという思いだけで筆を動かしていた。
DSC_9897.jpg▲プラモデルの本体とも言える箱。模型の箱には美麗なイラストがあしらわれる。そんな商品なかなか無いと思う。とっても幸せなことだ

DSC_0305.jpg▲箱絵のようには行かなかったけど、塗り上がった二式水上戦闘機のプラモを見てとても嬉しい気持ちになった。これは僕だけの二式水上戦闘機だ

DSC_9921b.jpg▲最初はこのようにグレー一色。これを実際の物と同じように塗っても良いし、自分の好きな色で塗っても良い。プラモデルはかっこいいモチーフを、あなただけのキャンバスにしてよい最高の遊びだ

 筆で塗っても良いし、エアブラシで塗っても良い。自分がやりたいようにやって良しなので、プラモデルの塗装は最高に楽しい。僕は塗料の食いつきを良くするのと、下地の色が影色になるようにエアブラシで紫や黒に近いグレーを吹いた後に筆塗りすることが多い。
 この下地の上に塗料を塗って行くと、最初は下地と本体に塗るメインの色でぐちゃぐちゃになって「本当にうまくいくのかな?」とめっちゃ不安になる。でもこの不安がたまらない。不安だからこそ「かっこよくしてやるからな~」みたいな親心が芽生えてしまうのは僕だけか。
 筆を動かすたびにだんだんメインの色で覆われていく。うっすら残った下地がプラモデルに表情を与えてくれる。その変化を筆からダイレクトに感じることができる。それはまさに、グレーだったものが1/48スケールの飛行機に変わっていく瞬間を味わっているんだ。
IMG_7189.jpg▲水性サーフェイサーに紫を入れた自作サーフェイサーをエアブラシで塗装
IMG_7202.jpg▲塗装はタミヤアクリル。つや消しが強い塗料なので少量のクリヤーを入れていつも塗っている。匂いも強くないので、塗装も快適
IMG_7201.jpg▲最初は超大雑把に全体を塗ってしまう

IMG_7222.jpg▲さっき塗った色がなんか微妙だったので、ライトブルーも少量混ぜてみる
IMG_7223.jpg▲プラモデルの塗装は行ったり来たりできる。ちょっと違うな~と思ったらいつでもやりおなすことができる
IMG_7226.jpg▲ホップ
IMG_7267.jpg▲ステップ
IMG_7268.jpg▲ジャンプ!!
 あとは明灰白色に白やライトブルーを混ぜる量を変えながら、どんどん塗って行く。パレットで適当に混ぜているから、塗るたびに微妙に色が変わる。一枚の翼、胴体に様々な色味が現れ、計算して塗るのとは違う雰囲気になり、それがまた楽しい。
 混ぜる色さえ変えなければ、だいたいの混色塗りは大きく転ぶことは無い。
 最後にタミヤスミ入れ塗料でウォッシングすれば、各面の色味もいい感じに落ち着いてかっこよくなる。
IMG_7271.jpg▲筆塗りの凹凸をプレミアムトップコートの光沢スプレーを吹いて平滑に。デカールも綺麗に貼れるようになる
IMG_7290.jpg▲タミヤスミ入れ塗料のダークブラウンは最高の色。このシャバシャバの塗料を全体に塗って、エナメル溶剤を染み込ませた筆や綿棒で拭き取ると、汚れを纏った雰囲気になる。簡単にかっこよくなるので病みつきになる
IMG_7293.jpg▲エナメル溶剤は梅皿に移して使用。塗料を塗った筆を洗う溶剤、塗料を拭き取るのに使用する溶剤と2箇所に出すようにしている。拭き取る時はきれいな溶剤の方が、拭き取りのコントロールがしやすいからだ
IMG_7295.jpg▲ダークブラウンを塗って、エナメル溶剤で拭き取った状態。このように翼の上を汚れが流れたような跡もつけることができる
IMG_7314.jpg▲完了!! この瞬間がたまらない!!

 あとは自分がかっこいいと思うように撮影。「最高だね!!」なんて心の中で語り掛けながら撮影する時間は、本当に楽しい。楽しすぎるので、僕にとって撮影までがプラモ趣味なんだと思う。
 作った楽しさを忘れないように、こうやってブログにも書く。どんなプラモも完成まで過ごした時間は、僕の人生の中で特別な時間だ。楽しかったプラモへの感謝も込めて。今回も最高に楽しかったよ。ありがとう「二式水上戦闘機」。
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まるで名作アルバムのようなプラモデル。「タミヤ 1/72 メッサーシュミット Bf019 E-3」

DSC_7189.jpg▲どんなプラモも完成後の撮影は楽しい!

 タミヤ 1/72 メッサーシュミット Bf019 E-3。世界中で何万人にも楽しまれたプラモだと思う。先日僕もそのひとりになった。なんだか有名なバンドの名作アルバムを楽しんだみたいだ。CDやレコードも同じものを買っても聴く人によって感想が違うように、プラモデルも同じパーツが入っているのに、作る人によって全く違ったものになる。だからこの趣味は楽しい。やめられない。自由と声を挙げずとも、作られたものはすでにあなたの思いがこもった自由の塊なのだ。
IMG-1402.jpg▲完成見本の写真もいいけど、イラストの方が好き。1/48の同機の箱がかっこいいんだよね

 どこにでも売っていて、手に取りやすいこのプラモデル。パーツは美しく、接着剤でピタピタとパーツが貼り合わさっていく。40分もあれば形になった姿を見ながらお酒やお茶を飲んで、楽しかった余韻をゆっくり味わえる。僕の大好きなプラモの条件がすべて揃っている。

IMG-1403.jpg▲パーツはこれだけ。プラモデルのパーツが入っている枠とパーツ配置もとても美しく、どこに何のパーツがあるのかも探しやすい。これがタミヤの普通の仕事なのだ。こんなプラモをランチ価格で楽しめる僕らはなんて幸せなんだ

IMG-1401.jpg▲手のひらサイズなのも良い。15分で、飛行機の形を楽しめて、その翼に思いを馳せることができる

 最近は筆塗りが本当に楽しい。ペタペタと塗るたびに、プラモデルがどんどん飛行機になっていく。エアブラシもいいんだけど、なんだろう、ダイレクトに楽しさが伝わってくるのだ。綺麗に塗ろうじゃなく、楽しく塗ろうという気持ちがどんどん前に出てくる。だからこそ完成後もなんだか愛おしく見えてくる。そんな風に塗れたプラモと、ファインダーを通して会話している時間は、とっても幸せ。だからプラモは面白い。次は何を作ろうかな。
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KPモデル 1/72 ホーカー テンペストMk.Vがくれた、心の暴風

DSC_4164.jpg▲こちらは第二次世界大戦のイギリス空軍において、最強戦闘機とも呼ばれているホーカーテンペスト。700km/hを超える高速性能で、大戦末期のドイツ軍をさらに追い詰めました

海外メーカーのプラモを楽しむ。
それは、
ちょっと旅に出ることと同義語。
まだ出会ったことのないメーカーを知る楽しみを、
ニッパーから感じてみる。

IMG-1112.jpg▲英語だけではない文字が書かれているこの箱。珍しいとは思いきや結構ヨドバシカメラとかでも積まれている。もはや飛行機模型の棚の普通な景色となっている

 僕は初めて、KPモデルというチェコのメーカーのプラモを完成させた。チェコと言うとサッカーしか知らない僕。名選手多いんだよね。ウイニングイレブンでも大活躍してもらった。ウイイレって、好きな選手を使っていると、ステータスとは関係ない何かが発揮される気がする。コンピューターゲームにも僕らの魂が乗り移るような……あの感覚に学生時代は毎夜魅了されていたっけ。
 そんなことはさておき、チェコのKPモデルだ。ヨドバシとかにも積んであるメーカーのプラモだけど、正直どんなメーカーでどんなキットを送り出しているのか分からなかったから、手にすることはなかった。でもnippperで読んだ内藤あんもさんのレビュー記事の写真をガン見して、「これイケそうだな……」と。そこでちょっとチャレンジしてみたくなった。あんもさんのレビューはいつも楽しくて、本当にプラモが作りたくなる。
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 ハチャメチャにツンデレなプラモだった……。最初は、キットを開ける前の不安なんてかき消すように、ぴしぴしとパーツが合っていく。しかし……機首の下にある大きなアゴのようなラジエーターパーツと胴体のパーツが何ともうまく合わない。
 プラモってパーツが合うのが当たり前でしょって思う人も多いと思う。でもそんなことばかりじゃなくて、実際に作る人がパーツと仲良くなるために色々やっているなんてこともある。国内メーカーのプラモはもうそんなことはあまりないけど(そういう意味では日本は幸せだけど、パーツが合うとかそんなことだけがプラモの最高の幸せではない)、海外のメーカーでは成型精度によって、いろいろな工作が必要になることもある。
 僕はそんな時は完全に合わせようとせずに(まぁ、できないんです。そういうこと)、目立たないところにパーツが合わさらないところを持っていく。飛行機だと裏返さない限り下の面は見えないから、下面に色々と粗を集約させていく。今回のテンペストもそんな風にして、形にしていった。形になってしまえばこちらの物。あとは楽しい楽しい筆塗りの時間だ。
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 僕は水性ホビーカラーかタミヤアクリルを使う。今回はタミヤアクリルを使用。この塗料、とてもつや消しが強いので、いつも少量のクリヤー塗料を混ぜている。透明のクリヤーだったりクリヤーグリーンやクリヤーレッドなど、色付きの塗料も混ぜたりする。そうするとガサガサしなくて良い。また普通の塗料を混ぜると、色味が一気に変わってしまうが、クリヤー塗料だと色味の変化が激しくないので、調色もしやすい。クリヤーイエローやクリアーグリーンを足しながら、いろんな緑やグレーを作って塗っていく。
 紙パレットの上で適当に混ぜていくから分量などは知らんぷり。塗るたびに、近似色が表面にたくさん塗られると、表情が豊かになる。僕はその様子が大好きで筆塗りを楽しんでいる。
 また今回、プラモを塗っているときに、コクピットの計器盤のパーツが入っていないことに気が付いた。まじか! と思ったが、もうパーツを入れ込むことはできない……。よく覗いてみる。コクピットの奥は暗黒。なんも見えないなら、きっとそこには計器盤はある。俺はそのまま計器盤のパーツを捨てた。
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 ガンプラ、タミヤ、ハセガワ、アオシマ、コトブキヤと言ったプラモの主流と一緒に並んでいる海外メーカーのプラモたち。そこにある世界とは何だろうか?
 海外メーカーのプラモを作るということが、僕のプラモライフにとってある程度普通になった時に味わったチェコの味は、もう一度世界のプラモを見てみようという気持ちにさせてくれた。
 メジャーじゃない(あえてここではそう言う)プラモを紹介してなんになるという人もいる。じゃぁ、なんで僕たちが大好きな模型店に、そういったプラモは置いてあるんだ。誰かが好きだから、必要だから、生み出したいからそこにあるんだ。そして内藤あんもさんのように、そのようなプラモの楽しさを共有しようとする人がいる。このようなことが今のメディアには必要だ。棚からひとつかみされたプラモが、誰かを笑顔にする。最高じゃないか。自分で買って、自分でスタイリングして、悩んで、写真をたくさん撮って、俺なりの考えでプラモの楽しさを伝えられるようになって見せる。心のどこかには暴風を。